2020年に劇場で上映された映画のうち、印象深く感じた作品を5本取り上げます。
(順位などは付けていません。今年を振り返って個人的に即思い出す作品を挙げています)
CATS キャッツ
みんな、この映画の存在を忘れていないか!?!
ミュージカルで有名な「CATS」を映画にした作品です。監督は「レ・ミゼラブル」「英国王のスピーチ」のトム・フーパーという、大変まともな方です。まともなはずなんですが、海外での前評判が凄かったですね。
世界が期待する実写映画『キャッツ』への酷評が笑えるほどエグいwwwww
http://yurukuyaru.com/archives/81771242.html
「これまで知られていなかった不浄なポルノのジャンルにうっかり遭遇したような体験だ。発情した毛皮のバケモノたちが舌を使ってミルクを飲み、いやらしい声をあげるたびに、FBIが劇場に乗り込んで来るのではないかと思った」
ニューヨークタイムズ記者
「バカと天才は紙一重というが、キャッツとはその紙の上に毛球を吐き捨て、それをケツでなすりつけてくるような映画だ」
SlashFilm記者
もはや大喜利のような酷評が多数。舞台版CATSのファンである私は、これだけ酷評されてると逆に楽しみやな…と思いながら映画館に行きましたが、
「…いや、ちゃんとしてるやん?」
というのが抱いた感想でした。
この映画、ものすごく真面目に作ったんだなーと感じます。舞台版に非常に忠実で関心しました。人間の役者が猫になりきって演技をするのがこの作品のキモなので、役者の身体能力が重要になりますが、映画版の役者さんたちもアクロバティックな動きをこなしていて良かったですね。猫型になったテイラー・スウィフトも大変良かったです。
CGは確かに不気味の谷を感じますが、舞台版を見ていればその意図はよくわかります。きっと調整に調整を重ねてギリギリのバランスに落ち着かせたんだろうなと… Gのシーンとかは確かに激烈にキモくて悪夢のようでしたが、まぁ野良猫の話なのでね。ということで、酷評していた人達の多くは舞台版を観ていないのでしょうね。今年のゴールデンラズベリー賞で6冠に輝いた本作ですが、まさしくラジー賞にふさわしい裏の名作だと思います。
ちなみに私の推し猫は、手品猫のミストフェリーズです。映画では彼が大活躍していたので、私は満足です。
ミッドサマー
「ヘレディタリー/継承」のアリ・アスター監督による「明るくてよく見える」ホラー。この映画は通常版を観に行き、後日限定公開されたディレクターズカット版も観に行きました。
映像、構図がカッコいいですね。内容はもう異常すぎて逆に笑えてきます。観た後ぐったりするのは間違いない2時間半(ディレクターズカット版なら3時間)。観た直後は、もう2度と観たくない!と思うのに、時間が経つと自分の中での評価がだんだん上がってくる変な映画です。幽霊やゾンビよりも怖いのはやはり人間だよなぁと思いますよね。そして、映画の怖さを超えて最も怖いのは、あのキラキラな笑顔で「みんなが不安になってくれるといいな!」(I HOPE THAT PEOPLE WILL FEEL UNSETTLED) と言うアリ・アスター監督です。
誰がハマーショルドを殺したか
1961年、コンゴ共和国へ向けて乗り込んだ飛行機がザンビアで墜落し、謎の死をとげた国連二代目事務総長ダグ・ハマーショルド。デンマーク人ジャーナリストのマッツ・ブリュガー監督が、彼の死について調べるうちに、闇の組織の存在と、とんでもない陰謀に行き当たってしまうドキュメンタリーです。
ハマーショルド氏の遺体の襟元には、スペードのエースのカードが差し込まれていたといいます。当初はハマーショルド氏の件について調べていたはずが、途中からどんどん壮大な話になっていきます。映画の結論は推測の域を出ませんが、これが本当だったらと考えるとヤバすぎて戦慄する話です。
カセットテープ・ダイアリーズ
「ベッカムに恋して」のグリンダ・チャーダ監督による作品。80年代イギリス、パキスタン移民の少年がブルース・スプリングスティーンの音楽に出会って人生が変わっちゃう実話。イギリス、80年代、音楽、青春ものという、もうそんなん絶対好きやんと思える話だったので、期待して観ましたが、本当に期待していた要素が全部入ってて大変良かったです。
主人公のジャベド君、最初はペット・ショップ・ボーイズを聴いていました。映画冒頭でPSBの「It’s a sin」が大音量で流れた時はキターー!と思ったし、最近イビサに行ってきたという幼なじみマット君の「シンセは未来」にも激しく同意します。が、ブルースの音楽に出会ってからがこの映画の本番です。ブルースの曲を初めて聴いたジャベド君の「これは俺の曲だ!!」感の表現が素晴らしく、激しく共感したよね。あと、妹ちゃんが学校サボって行ってたクラブでやってた昼イベがめっちゃ楽しそうでした。劇中では、アジア系のキッズはみんな知ってるパーティみたいに言ってたけど、当時あんなパーティがあったの?行ってみたいよね。
この街を出たい!とか、今の生活から抜け出したい!と思う若者の話は定番っちゃ定番だけど、お父さんはじめ家族と衝突して葛藤し、分かり合うまでの描写がしっかりあるのがリアル。実話ですしね。
TENET テネット
クリストファー・ノーラン監督最新作。2020年のベスト映画を1つ挙げるなら、もうこれですよね。
解説・考察については、既にネット上に多くのサイトがあるので割愛しますが、
「逆行する」図のアイデアがまずあって、その誰も観たことがない映像を実現するために、ストーリーなどをそれこそ逆行して作っていったんだろうなと推測します。これって辻褄合わなくない?と思う点も結構ありますが、まぁそこはあまり問題じゃないのかなと。007的に世界の各都市を移動しながら話が展開します。007オマージュということもあり、スーツなどの着こなしも素敵ですね。それにしてもブルックス・ブラザーズの扱いがヒドいよな!